第三章 始まりの夜、終わりの朝

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■ ■ 「オリウスに選ばれし者……やつはなんと言って貴様を選んだ?」  エルの姿をしたエルフェントはシータを睨みながら尋ねる。 「忘れたわ……」  シータははぐらかす様に答える。 「けれど、毎晩毎晩夢に出てくるわよ……あなたと、あなたのせいで滅びたこの世界が、ね」 「そう……相変わらずあの男はしつこいのね」 エルフェントはため息をつき肩をすくめた。 「義の神と称されておきながら、名乗っておきながら、自分には関係ない者は平気で殺すからね……あいつは」 「それはあなたも同じでしょう? いつまでも自分が基準の美しさじゃ永遠の美はないわよ」  シータが挑発的に嘲笑する。 エルフェントはその挑発を受けてと更に鋭い眼光でシータを睨んだ。  二人はただ、ひたすらに睨み合う。お互いの気迫で周囲の小石は空に舞い、彼女らを忠心として頂の空気は渦を生じて当たり一面を取り囲む。さながら、空気の渦と言う檻が頂を取り囲み、誰も逃がさない様、誰も寄らせない様、何人たりとも彼女ら二人の勝負を邪魔させないようにしている。    シータとエル――オリウスとエルフェントの戦い。    神々の能力を授かった人間と神々の内が一人の戦い。
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