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「ふふ……あなた何も知らされていないのね」
エルフェントは呆れた様に微笑しながら言う。
「そんな能力は私も持っているわよ。いえ……セシルも、神なら誰もが持っている能力なの」
エルフェントは言い終わるや否や自らの右側に横たわっている小太りの町人に目を向ける、睨む。途端に小太りの町人は苦しみだす。声にならない、表現のしようのない悲痛とも聞こえる声を体の奥から捻り出す様な声を上げる。天に助けを求めるように左手を高く揚げ、顎が外れるほど……外れてしまっているかの様に口を大きく開き、目を見開いたまま瞳の色を無くして、死んだ。絶命した後もその左腕は伸びたまま、高く掲げられたまま固まっていた。
その死に様は鼠や街の考古学者、ハボックと酷似していた。
エルフェントではなく、シータが殺してきたものと同じ死に様だった。
ね、とエルフェントはにこやかにシータに言う。
私もあなたと同じ能力を使える同類だから、この能力を使えるのはあなただけじゃないから安心して、と言わんばかりの同族に対する同情を誘うような微笑だった。
「睨むだけで命が奪えるこの能力はたいしたものじゃないわ。ええ、本当にただ殺すだけなのだもの。どうせ殺すのならば、私の美貌の糧となるか……」
そこまで言うとエルフェントは死に絶えた小太りの町人を一瞥する。
小太りの町人の死体は燃え上がる。燃え上がり、すぐに鎮まる。人の形は残っておらず、地面だけが黒く焦げていた。文字通り小太りの町人の死体は燃え尽きた。
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