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そのままガンのくれあい突入の二人の脇で、陸奥の女性秘書―歳は30代中頃といったところか。肩までのストレートヘアに少し濃い赤の着物の上に、制服とも言うべき白い羽織をまとった中々の美人『三条 茜(さんじょう あかね)』は深い溜め息を付いた。
またか―と。
そう。陸奥と羅希のこのやりとりは、万年行事と化していたりする。
というのも、羅希のその緊張感の無さを逐一陸奥がどやしているから―である。
取り敢えず任務は確実にこなしてはいるが、そうでなければ目もあてられないのも事実なのは言うまでもない。
「大臣、今日は総首会の日です。そろそろ準備を。」
不毛な睨み合いを断ち切るように、茜が淡と言い放つと、陸奥は羅希から視線を外さずに顔を遠ざけて、気を落ち着けるようにコホムと一つ。
「ま、ともかくご苦労だった。下がっていいぞ。」
「しつれいしま~した。」
これまた緊張感なく言って、羅希がドアノブに手をかけると、再度陸奥は口を開く。
「総首会、遅れずに出席するように。」
「へぇ~い。」
振り向きもせずにそうとだけ返事して、羅希は退室していった。
陸奥が、気の抜ける長い溜め息付いたのは言うまでもない。
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