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―と、かしらはとある事を思い出した。
腰に備え付けてある照明弾の事を。
あとは使用するタイミングだけだが―
にやりと、歪みそうになる表情を必死に押さえて、かしらはじりじりと間合いを詰め出した。
一方、羅希はうつ向いて、完全に動きを止めている。
その額には、冷えた汗が浮かぶ。
―と、かしらは羅希に突攻した。
槍の一撃と同時に照明弾を炸裂させればと―
ごそりと腰の照明弾に手を伸ばす。
瞬間、羅希はかっと目を見開いた。
やたら血走った目でかしらを、いや、その遥か後方を凝視する。
びくり、と。
そのあまりの覇気に、かしらが一瞬怯む。
「限・界っ」
意味不明な言葉を口走る羅希に構わず、かしらは槍を突き出し、そして―
「突破!!」
どっごおぉぉん
かしらは、宙に舞っていた。そらもう見事なまでに吹っ飛ばされて。
猛進する羅希の目に映るのは、船―の何故か透視された男子トイレのみ!
その場に残されたのは、屍塁々さながらの気絶した男達と、たった今落ちてきたかしら。そして、縛られたまま目を白黒させる娘だけだった。
再び吹き抜ける真っ白な風―
これが、この誘拐事件のあっけない幕引きであった・・・
つづく・・
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