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「おかしらぁ!あれじゃないんですかい?」
ホバートラックの荷台から、山武士の格好をした屈強な男が、双眼鏡を覗き込みながら言った。
その遠方には、砂埃を上げて航行する一隻の船がある。
かしらと呼ばれた、同じく山武士の格好した中々渋めな髭づらの男は、もう一台のトラックの荷台から遠方の砂埃の方を見る。
「ホバー航行する白い船・・・時間もあってる。間違いねぇな。移動するぞ!」
「ッサァー!!」
かしらの言葉に、同じく山武士の格好した何人もの男達は、野太い声を揃えて了解する。
と、全部で5台のホバートラックが一斉に移動を開始した。
かしらは同じトラックの荷台に、縛られて座り込む娘のそばにしゃがみこむと、口の端をつり上げた。
娘の顎を人差し指でついと持ち上げて、自分の方を向かせる。
娘は怯えた表情で、かしらと視線を合わせた。
「ふふっ。よかったな、嬢ちゃん。大事にしてくれるお父上で。それとも、大事にしてるのは娘じゃなくて名誉の方か?」
娘は一瞬悲しげに表情を曇らせると、何も言わずに顔を背けた。
かしらが、下びた大声張り上げて笑うと、トラックは減速し、やがて止まる。
その前方に迫る船。
かしらは再び口の端をつり上げた。
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