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「金は持って来たんだろうなぁ!」
月並みの台詞を大声で吐いたのは、先程の屈強な男だった。
―に、弱々しい手付きでジュラルミンケースを持ち上げて応えたのは、すこぶる顔色の悪い羅希である。
―身代金目的の誘拐―
それが、単純に事件の全貌であるが、その引き渡し役に羅希達遊撃隊が抜擢されたというのは言うまでもない。
敵の警戒を少しでも和らげるためと、一人で出てきたわけであるが、羅希の中で、今世界は歪んでいる。 かしらは一瞬?顔になりもしたが、どうでもいいかと気を取り直す。
「中身の確認だ!ケースを開けてその場で中身をぶちまけ・・・って聞いてんのかこらぁ!!」
見れば羅希は男達に背を向けて蹲っている。
「き・・・聞いてる聞いてる・・・続けて・・・」
どこに持っていたのか、集音マイクでそう言って、再び蹲る。
男は額におもいっきり青筋立てたが、極力平静を装いつつ、再度同じ台詞を繰り返す。
「中身の確認だ!ケースの中身をその場でぶちまけろ!」
聞いてるのか聞いてないのかイマイチ見て取れなかったが、羅希は言われた通り、ケースの中身―札束をその場に全てぶちまけた。
どさどさと、乾いた砂の上に山になって積み重なる札束。
おお~と、男達が声を揃えて歓喜する。
「次ぁ・・・こ、こっちだ・・・む・・・うぅっ・・・娘さん・・・は・・・無事なんだろ・・・なぁ!」
集音マイクで言ってもやはり間抜けだが、かしらは部下に顎で合図する。
―と、娘は縛られたまま、かしらの前へと連れて来られた。
その姿を確認すると、羅希は一瞬安心して、再び苦々しげに口元を押さえる。
そんな羅希には目もくれず、かしらが再度合図すると、今度は羅希に向かってかなり大き目な布袋が投げ渡された。
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