7人が本棚に入れています
本棚に追加
モニター確認していた船員達に、一瞬緊張がはしる。
軽い音をたてて、布袋が地に落ちる。どうやら爆弾の類ではなさそうだが―
羅希はそれを抓んで持ち上げると、男達の方へ顔を向けた。
「これ、エチケット袋ってやつ?わざわざ悪いんだけどこんなんいいよ!ここ外な」
「どあほっ!!だぁれがんな袋だって言った!?金を詰めるんだよそれに!!!」
ようやく普通に話せるようになった羅希の言葉に返ってきたのは、屈強な男の怒声だった。
つまり、中身を確認すると共に、ジュラルミンケースに発信機等のカラクリが施されているのを懸念して、入れ物の交換を要求しているのだ。
「・・・・・・・・・!」
抓み上げた袋をじっと眺める事しばし―と、ようやく言われた事を理解して、照れ照れと、後ろ頭に手をやって恥ずかしいと言わんばかりに頬を赤らめる。
モニター越しに、船員達全員が額に汗したりする。
ともかくと―
大量の札束をその袋に詰め終えると、出来たとばかりに高らかと持ち上げた。 屈強な男は一つ溜め息をつくと、気を取り直して叫ぶ。
「その袋を持ってここまで来い!娘と交換だ!!」
ただのチンケな悪党かと思いきや、その要求の一つ一つは中々的を得ている。
ただ一つ、引き渡し人の指定をしなかった、という根本的な過ちさえ侵してなければ。
最初のコメントを投稿しよう!