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羅希は、まだ多少フラつく足取りで要求通り男達の方へと歩いていく。
そのまま辿り着いて、無造作に袋をつき出すといたって真面目な表情で―
「早く受け取って、娘さん返してくんない?実はトイレ行きたくて・・・」
落ちる沈黙、吹き抜ける白い風。
だがいたって羅希は真顔である。
ふっと一つ鼻で笑って―
「何故先に行っとかないのかと、突っ込みをいれたいのだろうから敢えて言おう。上が落ち着いたら今度は下にってな感じだ!」
ずべしゃっ
おいしいずっこけシチュエーションである。
「まぁ、何でもいいや。おい」
立ち直って、かしらが合図すると男の一人が羅希の手から袋を取り上げる。
「きゃっ」
―と、娘は羅希へと突き飛ばされた。
そのままよろけて羅希の胸へと倒れ込む。
「もぉ、大丈夫だ。」
優しく言う羅希の顔を見上げると、娘は涙ながらに再度羅希の胸に顔を埋めた。
「さぁてと、んじゃぁさっさと帰ってトイレに」
ちゃっ
気楽に言って立ち去ろうとる羅希の喉元に、刀の切っ先が突き付けられる。
「何の真似?」
表情一つ変えずに問う羅希に、かしらは口の端をつり上げて―
「俺達が無事待避出来るまでの人質だ。」
その言葉が合図とばかりに、男達は手にしたバズーカを船に向けて一斉照射した。
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