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「──っ!」
言い返す言葉が見つからない。
鼻先に散る火の粉を払うように、パフは首を振った。
「ジャッキーと僕は友達だ。彼は必ず、僕のところに帰ってくる」
「いつまでも、夢みたいなことを言うな! パフ!」
鉤爪の生えた前足で、ハイネはパフの両肩を掴んだ。
「現実を見ろ! 俺たちだって、いつまでも子供ではいられないんだよ!」
ふと、ハイネは気づいた。
自分の海色の目に映るパフが、哀れむような目で自分を見ていることに、気づいた。
「年を取ると臆病になるのは、人間もドラゴンも同じなんだよ──ハイネ」
ばさ。
ゆっくりと、パフが羽ばたく。
「僕も、あの頃──本当に幼かったあの頃と比べたら、随分と臆病になったと思うよ。人間に出会うのを、心のどこかで怖がってる。ジャッキーもきっと同じだ」
「なら、パフ」
──こっちに戻ってこい。
今ならまだ、間に合う。
そう言おうとしたハイネの言葉は、喉の奥に消えた。
パフの瞳──琥珀色の美しい瞳の奥に燃える、炎が見えた。
「僕は待たなくちゃいけないんだ……
僕を信じてくれる、たった一人の人間の友達を!!」
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