Pilatus:Mountain Of Dragons

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その言葉を聞くなり、ハイネはさっと上空に飛び立った。 さっきまでいた場所を、紅蓮の炎が一瞬にして覆う。 「パフ──」 「僕は、ジャッキーを待たなきゃいけないんだよ! ハイネ!」 ふぅっとパフの吐いた息に、炎が混じる。 ハイネは背筋に冷たいものを感じた。 ──さっき、咄嗟に飛び立たなかったら、自分は今頃…… 青紫の翼が、音もなく拡がる。 ハイネは哀しげに目を細めると、ぐっと高度を上げた。真紅の身体が、冷たい大気を切り裂く。 十年前、パフはあまり飛ぶのが得意ではなかった。今もそうなら、この高みには来られまい── 「僕は昔の僕じゃないよ」 背後の声に、はっと振り向く。琥珀色の瞳が、同じ高さでハイネの海色の目を見つめていた。 「パフ、君は……」 「飛ぶの、練習したんだよ。ジャッキーを背中に乗せて、入り江をぐるっと回るために」 ばさり、と。 羽ばたくその音は、そこらのドラゴンより力強い。 「いつまでも昔のままなんて、そんなものはどこにもいない──」 「っ、ならば」 ハイネは口から、太陽のように熱い炎を吐いた。 目的はただ一つ。 目の前にいるかつての友──パフを、攻撃するため。
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