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今日も煤を掃く箒の音で、街の朝が始まる。
マスクをつけた子供たちが家を飛び出し、煤けた猫が欠伸をする。
雨上がりにほんの少しだけ青さを増した空が、黒い水溜まりに映る。
少年の漕ぐ磨かれたばかりの、眼に沁みる赤い自転車は水溜りの空をかき消すと、電柱の前に盛大なブレーキ音を鳴らして急停止し、
小さな手がハケで糊を塗ってそこへチラシをぺたぺたと貼り付けた。
少年の去った後には、有名な画家の描いた黒いバレリーナのポスターが残されていた。
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