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プリマを目指していた若きバレリーナは、自分をこの劇団に引き抜いてくれた監督の事を、西の街で降るという黒い雪の様だと思った。
バレリーナは小さな頃から白く、儚く、美しい白鳥のオデット姫を演じる事を夢見て来た。
水面下で忙しなく動くみっともない足も、水の上を美しく滑るためならばと、今まで辛い練習にも耐えて来た。
しかし白鳥の湖の講演が決まり、監督から言い渡されたのは白鳥ではなく、黒鳥のオディールの役であった。
監督は劇団の星である二人のバレリーナに対照的な、オデット、オディールの役を演じさせようと試みたのである。
今まで人前で踊ることさえできなかったバレリーナにとって、この劇団で日の目を見させてくれた監督はまさに幸福をもたらす白鳥の羽毛のような真っ白な綿雪だった。
しかし今、その監督の一言で彼女の夢は潰えようとしていた。
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