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「ちょっと佐久間ぁ!」
「は、はいっ!?」
突然、ケイさんから名前を呼ばれてうろたえる僕。
自分の作業を中断し、慌ててケイさんの元へ走る。
『呼ばれたら10秒以内に来い!
何度も同じこと言わせんな!』
僕が新入りだった頃、そうやって毎日のように怒られてたっけ。
いや、違う。
いまだに、毎日怒られてる。
「…ハイハイ!
なんすか、ケイさん?」
「ハイは一回!
何度も同じこと言わせんな!
いやまぁ、それはそれとして!
…佐久間、お前どう思う、この格好?ちょっとやり過ぎじゃないかな…?」
フィッテングルームから出てきたケイさんは、なんとまぁ、見事にサンタさんのコスチュームに身を包んでいた。
「…ぅあ!!めっちゃイイ!!
めっちゃイイっすよケイさん!?」
僕は素直な感想を述べる。
「…ホントか?
でもこのスカートはさすがに短かすぎないか…?」
顔を赤らめながら、ケイさんが鏡の前でいろんな角度から自分の姿をチェックする。
「…いやいや!その短かさがまたイイんすよっ!個人的にはもうちょっと短くてもイイ……あぃたっ!」
どこ見てんだよ!?と、ベシッと頭をハタかれる僕。
いや……、
いやしかし、これはイイものを見た。
サンタの帽子からはみ出たケイさんの栗色のショートヘアを後ろから眺めながら、僕はひとりニヤニヤする。
「いやいや、全然おっけーっすよケイさん!
やっぱ、イルミネーションに負けないぐらいのインパクトがなきゃダメっすよ!」
「全然おっけー、てのは文法として間違ってるって昨日言ったばっかりだろ!
何度も同じこと言わせんな!バカ佐久間!」
またしてもベチッと頭をハタかれる僕。
サンタのコスプレお姉さんからこんなにも頭をハタかれるのは、世界でも僕だけだろう、たぶん。
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