ちっぽけなメリークリスマス。

「あ、それとな、佐久間！」

いまだに鏡の前でクルクルと回りながらケイさんが言う。

「ツリーの飾り付けは終わったんかー？さっさと終わらせないと間に合わないぞ！」

「…ぅあ！すみません…！
あと、まだ１時間ぐらいはかかりそうです…！」

「なにモタモタやってんだよ！
ホラ、私が買ってきたそこの紙袋にもいーっぱいいろんなもん入ってるだろ!?ちゃっちゃと動け!!何度も同じこと言わせんな!!」

…そ、そんな…！
飾り付けしてる最中にあなたに呼ばれたから来たんですよ、ケイさん…！

ぱんつ見えそうだよなーとかつぶやきながら、サンタスカートを下へ下へ引っ張るケイさんに向けて僕はぼやく。

「…じゃ、佐久間。
とりあえずその紙袋の中身、片付けといてよ。値札とか、そのまんまだからさー」

「…はい。うっわ、めっちゃいっぱいありますねぇ…。しかも100均のオーナメントばっかしじゃないっすか…！」

「なに言ってんだよ!?今年は市から援助金もらえなかったんだから仕方ないだろ!?文句言わずにちゃっちゃと動け！何度も同じこと言わせんな！」

ぅあー…、また怒られた。

ガサゴソと紙袋からオーナメントを取り出し、ひとつひとつの値札をハサミで切り離したり、剥がしたり…。

クリスマスだっつーのに、なんて地味なコトやってんだ僕は。

「…あれ？」

そんな中、僕はその紙袋の中にあった赤いクマのマスコットを手にして一瞬固まる。

「…ケイさん。このクマのぬいぐるみ、値札ないっすよ？」

「…んー、どれー？
おい佐久間、そりゃぬいぐるみじゃなくて、あみぐるみってヤツだぞ？」

「あみぐるみ？なんすかソレ？」

「…だから、今お前が手に持ってる、そーゆうヤツのことをあみぐるみって言うんだよ！何度も同じこと言わせんな！」

しかめっつらのサンタお姉さんがまたしても怒る。
子供が泣いちゃうからやめてくださいよ、その格好で怒るのは。

…でも、なんだろう。
このクマさん、どこかで見たような気がするんだけど…。