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「…ふーん、私、こんなの買ったっけ…?」
僕の手からあみぐるみを奪ったケイさんが、その赤いクマさんを見ながらウーンとうなる。
ちょっと唇をとがらせて。
眉間にシワを寄せて。
…あー…、ちくしょー。
やっぱ、かあいいなぁ、この人。
しかもサンタのコスプレとか、もはや反則すぎる。
「…うーん、買った記憶はないんだけどなぁ…。いちいち見ずにガッサリと大人買いしたからなぁ…」
「…まさかケイさん…、万引きしたんじゃ…!?」
「バカ!!そんなことするわけないだろ!!…てかさ、値札がないってことは、そもそも売り物じゃなかった、ってことだろ、きっと」
「え!?じゃあ、展示品をパクったってコトですか!?」
「だから違う!!
…しかしコレ、実際使われてるっぽいぞ?ちょっと汚れてるし、どう見たって手作りだろ?」
ケイさんがクルクルと、そのクマさんを手でもてあそぶ。
「そですねー。ストラップも切れてるぽいし、なんかの拍子で誰かのが紙袋に入っちゃったんすかね?」
「じゃ、電車の中かな?
めっちゃ混んでて大変だったからな!ガンガン人にぶつかりまくったしな!
てなワケで来年はお前が買い出し行けよ、佐久間!」
えー!?
とんでもないとばっちり!
「…じゃ、ケイさん…!」
僕は顔を上げて、ちょっぴり勇気を出して提案してみた。
「…ら、来年は、二人で一緒に行きませんか、買い出し…?」
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