22人が本棚に入れています
本棚に追加
「…なに泣きそうな顔してんだよ、佐久間。
ほら、ちゃっちゃと飾り付け終わらせてしまえ!時間ないぞ!何度も同じこと言わせんな!」
「…あ、ハイ!」
とりあえず、そうだな。
今は感傷に浸ってる場合じゃない。目の前の仕事を終わらせなきゃ…!
僕はケイさんの手から、再びクマのあみぐるみを取り戻す。
「でも、ケイさん…。
さっき去年の飾り付け直してたんですけど…、このあみぐるみとまったく同じ、青バージョンのがあったような気がするんすよ…」
「んなワケないだろ。既製品ならまだしも、手作りなんだからさ。
…それともなにか?
もともと1組だったふたつのあみぐるみが、1年越しに再会したとでも言うつもりか…?」
ニヤニヤとバカにするように、ケイさんが僕を見る。
大丈夫大丈夫。
ケイさんからバカにされるのは慣れっこだ。
「そうですよ、ケイさん…!
そのふたつのあみぐるみはきっと恋人同士で、1年後のクリスマスに見事再会を果たしたんですよ!」
「…あーはいはい。
佐久間、お前はただのバカかと思ってたが、違ったみたいだな。
ただのロマンチストバカだった」
ぐっ…!心が折れる…!
だが負けるな、僕…!
「いやいや、ホントなんすよ!
後でちゃーんとふたつ並べて飾っときますから、本番の時に確認してくださいよ!」
僕はケイさんに向かって吠える。
「わかったわかった…。
そういうことにしといてやるよ。
しっかし、アレだな。
あみぐるみのクマにさえ恋人がいるってーのに…、
キミには恋人いるのかい、佐久間クン?」
冗談半分で、ケイさんが僕に聞く。
ケイさんがこういうこと聞くのって珍しいな…。
知り合って2年経つけど、初めてかもしんない…。
最初のコメントを投稿しよう!