ちっぽけなメリークリスマス

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「…なに泣きそうな顔してんだよ、佐久間。 ほら、ちゃっちゃと飾り付け終わらせてしまえ!時間ないぞ!何度も同じこと言わせんな!」 「…あ、ハイ!」 とりあえず、そうだな。 今は感傷に浸ってる場合じゃない。目の前の仕事を終わらせなきゃ…! 僕はケイさんの手から、再びクマのあみぐるみを取り戻す。 「でも、ケイさん…。 さっき去年の飾り付け直してたんですけど…、このあみぐるみとまったく同じ、青バージョンのがあったような気がするんすよ…」 「んなワケないだろ。既製品ならまだしも、手作りなんだからさ。 …それともなにか? もともと1組だったふたつのあみぐるみが、1年越しに再会したとでも言うつもりか…?」 ニヤニヤとバカにするように、ケイさんが僕を見る。 大丈夫大丈夫。 ケイさんからバカにされるのは慣れっこだ。 「そうですよ、ケイさん…! そのふたつのあみぐるみはきっと恋人同士で、1年後のクリスマスに見事再会を果たしたんですよ!」 「…あーはいはい。 佐久間、お前はただのバカかと思ってたが、違ったみたいだな。 ただのロマンチストバカだった」 ぐっ…!心が折れる…! だが負けるな、僕…! 「いやいや、ホントなんすよ! 後でちゃーんとふたつ並べて飾っときますから、本番の時に確認してくださいよ!」 僕はケイさんに向かって吠える。 「わかったわかった…。 そういうことにしといてやるよ。 しっかし、アレだな。 あみぐるみのクマにさえ恋人がいるってーのに…、 キミには恋人いるのかい、佐久間クン?」 冗談半分で、ケイさんが僕に聞く。 ケイさんがこういうこと聞くのって珍しいな…。 知り合って2年経つけど、初めてかもしんない…。
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