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「君嶋おっはよーん!」
テンション高い声とともに伏せて寝ていた俺の背中に柔らかい感触のすぐ後に、まるで鉛のような重みがのしかかる。ゆっくりと起き上がり後ろに視線を移すと、またもや見慣れた顔。
「…おはよ田中文子(たなかふみこ)。」
こいつの名前は田中文子。
色抜けすぎてすっかり痛んでしまっている金髪のロングに、お世辞にもぽっちゃりという可愛い言葉では片付かない体型で、フガフガと鼻息が荒い。
アイライン引き過ぎて目がパンダコパンダ、アクセサリージャラジャラ、ネイルキラキラ、というかギラギラ。スカートはパンツ見えかけにニーハイ。ニーハイの履き口からは肉がちょっと溢れるぐらいが俺的にはツボなのだが、こいつはそんな可愛らしいものじゃない。今にもニーハイが破れそうなのだ。
やめろ、ニーハイが可哀想すぎる。ニーハイはもっとスタイルのいい女の子に履かれたかった筈だ。さらにカーディガンはサーモンピンク。リボンは正式な制服のじゃなくて、どこかの店で売ってる真っ赤なサテン地。誰がどこをどう見てもギャル。東武線に乗ってデカい声で電話してそう。
「もうーフルネームじゃなくてミーって呼んでって言ってるじゃん。」
田中文子はそう言って軽く頬を膨らませた。
誰が呼ぶか。全く可愛くないわ。
彼女は田中文子という自分の名前がなんかイモクサいと言って気に入らないらしく、周りにはミーと呼ばせている。
『ふ』と『こ』はどこに行った。と言うより名付けてくれた親に謝れ。
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