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「あぁおはようって…。」
優はすーっと寝息をたててまた…寝た。
「おい優寝るなよ。」
「んー…。」
よほど眠いのか優はかろうじて起きてはいるが目はトロンとしている。というよりどこから入ってきたこいつはといっても入れる所は玄関は鍵をかけているから一カ所しかない。
「優、どこから入った?」
とりあえず訊いてみた。すると優はゆっくりと腕を上げ、ベランダの方を指差した。俺の部屋はマンションの4階。忍者かこいつは。
「達哉ー…。」
優はゆったりとした口調で口を開いた。このときの優は必ずなにかをおねだりするときだ。
「どした?」
「朝ご飯ー…。」
あっまだマシなおねだりだ。というよりまだ食ってなかったのか。
「弁当の残りならあるぞ。」
「やだ。」
朝ご飯と言ったのにやだって矛盾してますよこの人。
「やだとはなんだやだとは。」
「だってさー…考えてみ?弁当の残りって朝食と昼食が被っちゃうじゃん。有り得ない。」
どこの美食家だおまえは。
「贅沢言うな。」
「作って。」
「面倒くさい。」
俺は優のおねだりを断った。ただでさえこいつの弁当を作るために早起きして疲れて二度寝したい気分なのに朝飯を作れだと?冗談じゃない。
「作ってー。」
「キッチンは貸してやるから自分で作れ。」
俺はため息を吐いて優の頭をぽんぽんと撫でた。
「やだー達哉の作ったご飯のがおいしいもん。」
優は俺にもたれたままむくれた。175センチで、しかもイケメンの部類のデカい女がいくらむくれたって全然可愛くない。
「作れ。」
もうすでに命令口調。全然可愛くなくしかも、命令するときの声が異様に低いので可愛さの欠片も無い。むしろ迫力があり恐ろしいくらいだ。俺は優の迫力に負けてフレンチトーストとコンソメスープとサラダをしぶしぶと作ったのは言うまでもない。
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