わがまま彼女。

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「ごちそうさまー。」  いやあ食った食ったと言わんばかりに優は満足そうに笑った。優は食べているときと終わったときに、本当にいい笑顔になる。作るのは面倒くさいけれど、その笑顔を見ると作りがいがあるって思う。 「うまかったか?」  俺はちょっと機嫌が良くなり優に訊ねた。優は口を拭きながらこう答えた。 「塩が足りない。」  まだわがまま言うかこんにゃろ☆  そう言いながらも調理師になりたい俺はしぶしぶメモをとった。  ふと時計を見ると針は8時30分を指していた。学校が始まるのは9時30分。通学にかかる時間は40分。ゆっくり歩いてもぎりぎり間に合う。 「行くぞ優。」 「はーい。」  返事をした優は俺にあるものを放り投げた。そのあるものとは、俺のバイクのヘルメットだった。 「優…おま…」  そう言って振り向くと優は既に優専用のフルフェイスを被り、俺に向けて親指をたてていた。 「いや…グッドじゃなくて…。歩いて行こうぜ一時間かからないんだし。」 「達哉あんたねー歩いて40分って3.2キロなんだよー。車で行ってもおかしくないって。」  被ったままで喋るから優のフルフェイスが息で曇る曇る。その光景を見ていると失礼ながら笑えてくる。 「3.2キロっておまえ普通に自主トレで10キロ走ってるだろ。」 俺のツッコミに優が牙を剥く。 「自主トレと通学は別。」  まあ確かに別といえば別だがこんな距離体力馬鹿のこいつなら息一つさえ乱れはしない。自分の好きなことならいくらでもするが一瞬でも面倒くさいと思えばなかなか手をつけない。人間にはよくあることだが、優はそれが人一倍ひどい。よほど面倒なのか一歩も引かない。
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