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「ねえ、」
「あ?」
「ちゅーしていい?」
「お前とするぐらいなら死んだほうがマシ」
「じゃあぎゅーするぅ!」
傷んだ金髪をふわふわと揺らしながら細く脆い身体で赤い髪の毛をした目付きの悪い男に抱き着く
赤い男は煙草臭かった
でも
安心する
好きなニオイ
胴にしっかりと白い袖に包まれた細い腕を巻き付け、首筋に鼻を寄せると男のニオイをいっぱいいっぱい吸い込む
まるで麻薬の様に
不思議な気持ちになる
自然と
笑みが漏れた
「おい、きめェ。さっさと離れろ」
拒絶の言葉が耳に届いた瞬間
腹に激痛が走る
なぐられた
いつものことだ
でもこの痛みは
「っぐ、ぅッ…!あ、愛がいた、い…!」
そう、おれにとっちゃ、愛のひとつ
膝から崩れ落ちて
息ができなくなる
吐くことはできても
吸い込むことができない
呼吸をしようと開けっ放しの口からは唾液が垂れ
地面を濡らした
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