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竜舞は横に跳び、避けた。
あの歩法術を使えない訳ではなく使うまでもなく避けられるからだ。
恵は避けられバランスを崩しながら子犬のような顔で竜舞を見た。
「鍛練にい・・」
恵は竜舞の腕を掴み止めた。
「私がね、貴方に竜舞につきとまうのはね。
私の事を・・」
恵の言葉を遮るように足音がドタドタと近付いて来ていた。
「お前という男は相変わらず、恵をたぶらかしおって。
お主のような奴に娘はやらんぞ」
顎に髭をたくわえた男が恵と竜舞の間に立ち、恵の手を竜舞からかいほうし、竜舞を睨みつけた。
この男は大江道場の主だ。
この男にも門下生にも嫌われている。
嫌わていないのは恵だけという訳だ。
大江道場の主は恵を自分の背中に置いた。
「うるさい奴だな、相変わらず。
別にたぶらかした覚えはない。
こいつが勝手につきとまってくるだけだ」
竜舞は大江道場の主の後ろにいる恵を指さした。
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