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奇人変人なんてそこらへん探せばいくらでもいる。ていうか、そんな人ばっかり。もちろんあたしもその一人。
放浪癖やら腐女子やら、それらもまた個性なわけよ。
(あ。)
放課後。生徒の少なくなった廊下で鮮やかな赤毛の尻尾が見えた。
階段に消えていく後ろ姿だけだけど、誰かはわかる。
成績優良者、だけど放浪癖の持ち主。データは少ないけど、十分変り者に分類できる。
(長身痩躯とはこんな感じなのか。あ、でも以外と筋肉ついて、る…って!)
思わず観察しちゃったけど、なんなのよこの人。
追い掛けるように階段を下りて呼び止める。
「なんて格好してるのよ!」
夏を思わせる人だった。振り返った彼はそんな印象。
だけど今は冬。雪だってちらつきはじめる季節。
「ん? お前さん、誰じゃ」
「そんなこと、どーでもいい! 何その薄着!」
年上だというのも忘れて怒鳴る。
階段の中程。立ち止まった彼と一段間を置いた段の上。(不本意ながら)同じような目線になったところで、首からマフラーを外して押しつけた。
きょとんとしたまま受け取らないウルさんに痺れを切らしたあたし。
「風邪ひく…ひきますから!」
マフラーを持ちなおして、勝手に首に巻く。止めようとする彼の指が、あたしの手を掠める。
ひやりとした感覚に眉を潜め、コートのポケットからカイロを取り出し、手に握らせる。
「季節に合わせた服、着てください!」
そんな言葉を言い捨てて、あたしはそのまま保健室に向かった。
(変な奴…。しかしあったかいのぅ)
(リーちゃん寒いぃ! カイロ暖まるまでここにいさせてー)
(マフラーはどうした)
(…あげた)
((あの冷え性の斎が…))
(あれは誰じゃったんじゃろ)
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