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顔面蒼白で、息も荒い。魔法陣を作るほどの血を垂れ流したのならば当然だった。
「お、お前……どうして……」
ライザーは身体に鞭を打って頭を持ち上げた。クレアは手首に布を巻きながら、力なく笑った。
「私はね……目の前で死にそうな奴を見つけたら絶対に助けるって決めてるの……だから、私は強くならなくちゃいけないの……」
息も絶え絶えに、だが毅然とした目つきでクレアはそう言った。ライザーの胸がどくんと高鳴る。何故他人のためにそこまでできる? 自分みたいな男にここまで出来る?
クレアの生半可では決して出来ない決意に、ライザーは自分が情けなくなった。最初から、勝負にすらなっていない。見栄を張りたいだけの自分がどれだけ惨めに見えただろう。
このままではあまりにも格好悪い。このままでは終われない。
ライザーは歯を食いしばり、倒れたまま拳を地面に突き立てた。
「ぐ……うぉおおおお!」
ライザーは叫び、そして立ち上がった。オーバードライブを引き起こしたばかりのその身体で。
さすがのクレアも目を丸くしている。
「あんた、一体どんな、身体の構造してんのよ……」
それには答えず、ライザーはクレアの腕を掴んで背中に抱え上げた。そして一歩、また一歩と、ぬかるむ沼の中を歩くようにライザーは足を進めた。
背中に担がれたクレアが驚いて声をあげた。
「ちょっと……このままマルクまで行くつもり!? 無茶よ、さすがのあんたでも死ぬわよ!」
「うるせえ! てめーに、借りなんぞ作るのは、まっぴらごめんだ!」
吐き出すように叫ぶと、ライザーは荒くなった呼吸を整えながら森の中を歩いた。クレアも限界だったのか、それから声を出すことはなかった。途中で気を失ったのかもしれない。
結局、ライザーたちはマルクに着く前に、学校の教師に発見され保護されることとなった。二人が遠足の途中でいなくなり、探し回っていたようだ。
病院のベッドでそんなことを聞かされて、クレアの無事も聞いてホッと安心したところで、担任の教師の説教も受け流しながら、ライザーは天井を仰いだ。
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