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「……友達、か」
ストラドが病室を去った後、ライザーは窓を見て小さく一人ごちた。以前のライザーなら「冗談じゃない!」と叫び散らかしていただろう。だが、ライザーの中で確かに何かが変わった。
友達と言われても、何かピンとこない。ライザーにとって友人といえた人物は、いつもライザーにくっついていたジャックとカッツぐらいだ。いつもライザーの側で威張り散らかしているだけの二人だったが、ライザー自身、友人とはそういうものだと思い込んでいた。
だが二人は自分たちにとって都合の悪くなったライザーをいともあっさりと切り捨てた。所詮、その程度の関係だった。
なら、友人とは一体なんだろう。今までずっとクレアを負かすために一生懸命で、他のクラスメイトたちになど見向きもしなかった。なら、クレアは友人か? と問えば、それは全力で否定したかった。
そういえばアイツはどうしているだろうとふと思い、通りがかった看護婦に聞いてみると、個室で安静にしているとのこと。ライザーは貴族だから一人部屋だったが、クレアの場合は重傷だったことが理由での個室らしい。
面会謝絶という訳でもないらしいので、ライザーは少し顔を出してみることにした。ベッドから起き上がろうとすると若干身体がだるかったが、歩けないほどではない。普通ならオーバードライブ直後に歩けるはずもないのだが、身体が頑丈という理不尽な理由で院内を闊歩した。途中で医者が信じられないものを見たような顔をしていたことに、ライザーが気付くはずもなかった。
クレアの病室の前まで来て、一瞬ためらった後、トントンと二度ノックした。
「入るぞ」
あの女が返事をするとも思えなかったので、声をかけてドアを開けた。駄目なら何か反応するだろう。
個室といえども中は案外広く、奥の窓際に設置されたベッドの上で、クレアが驚いたような顔をしてライザーを見て、そして段々と呆れたように肩を落とした。
「なに、あんたもう動けるの? 本当、どんな身体の構造してるのよ」
ライザーは笑って両手を上に向けた。
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