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気がつくと見慣れない天井が見えた。起き上がって見渡してみると、窓から見える景色はもう暗かった。夜だ。この世界に来て初めての夜――初夜だ。そういう意味ではないけど。
などと余計な思考に脳の容量を割いていると、ギィ、という古びた音と共に、この部屋に忍びこむゆらゆらとした灯り。
「起きたか」
あの変態だった。蝋燭を持っているが、明かりなら電気を点ければ……あれ確か、さっき見えたのは木製の天井だけだったような――
「何をキョロキョロしてるんだ。電球等ないぞ」
「……へえ、この世界は文明の発達が遅いんだな」
市場があんなに賑わってる時点で薄々は感付いてたけど。きっと、伝勇伝の世界みたいな世界なのだろう。
「びっくりしたぞ。熱はないのに顔は赤いわ、息は荒いわで……」
「そうか、すまん……。あんたがここまで運んでくれたのか?」
「ああ。ついでに言うとメイド服に着替えさせたのも俺だ」
「あ。ほんとだ」
今までは全く気づかなかったが、確かに今見るとメイド服だった。
メイド服を着てると自覚すると途端に足がスースーする感覚に陥る。よくあることだ。
なんだか頭も痛い。
「しかしお前……ドSに見えてかなりのドMなんだな」
「ははっ、そんな訳ないだ……え、マジで?」
初耳だ。
「自覚してなかったのか? ……しかし今考えてみると笑い事だな。腰砕けて倒れて頭打って気絶とは」
「今度こそそんな訳ないだ……え、マジで?」
もしそれが本当なら一生の恥だ。
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