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「なあ」
俺は変態ご主人様に話し掛ける。そうだ、最初から変態ご主人様でよかったんじゃないか。
「家がどうたらって会話した気がするけどさ、あれ、実際はここで着替えりゃよかったんじゃね」
「…………」
図星を突かれて驚愕しているのか、変態様は何も言わない。
俺は続けて畳み掛ける。狙いは変態様の奴隷化だ。
この変態の弱みさえ握ってしまえば、もう俺の生活を脅かす者はいない。
「その選択肢に手を伸ばしてりゃ、お前が俺を人質にとらなくても済んだんじゃねえのかよ」
俺は語気を強めて、あたかもそれに憤慨しているかのような口調で嘯く。
「そうだったな」
あっさりと認める変態様。よし、あとはジワジワ小突いていくだけ――――
「だが、俺を退けてお前はどう生きるつもりだ?」
……脅しではない。これはこいつ自身のはっきりとした疑問だ。
しかし、そんなことをいちいち考えて動く俺ではない。全てはやった後に考えればいいのだ。
「実に愚かな選択だ。お前はこの何もない世界で、独りで、元の世界に帰る方法なり何なりを見付けなければならない。――無論、自ら選んでこの世界に永住するも良し、地球に帰る手立てを探すのも良しだ。……しかし俺が元の世界に帰るための情報を持っているとしたらどうだ? それでも頑なに孤独を欲しがるか?」
まくし立てる変態様。
……これこそ図星だ。言葉の一つ一つが無駄に鋭さを含んでいるせいで、俺は蜘蛛の糸に絡められた地球防衛軍のお二人ぐらい身動きがとれない。なんでペイルウィングの顔は見れないんだろうな。
「ペイルウィングのあの人は絶対に美人だと思うんだ、足も綺麗だし。泳ぎ方すっげえ下手だけど」
気づけば俺は、追い詰められて自白する時の犯人みたいな辛気臭い顔で語っていた。内容は至極どうでもいい事だけど。
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