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「そうか。俺は地球防衛軍をしたことはない」
無表情で端的に言い表す変態様。
興味がない、とは考え難い。何故なら、この変態は今までも散々俺に突っ掛かってきたからだ。いつもは無表情なくせに、大きな刺激を与えた時だけ激しく動揺する。
こいつは、自分を偽って生きているのではないだろうか。唐突に、そんな同情めいた言葉が俺の心中を駆け回った。
「では、俺は自分の部屋に帰るからな。お前は一応病み上がりなのだから大人しくしておけよ」
「……ああ、また明日な」
笑って手を振る。変態様も、少しだが笑っているように見えた。
……眠くないし、暇だ。話相手すらいないこの状況に軽く嫌悪感さえ感じる。
……もしかしたら、この世界に来たおかげで何か魔法みたいなものが使えるようになってるかもしれない。俺は寂しさを紛らわすようにかめはめ波の練習をする決意をした。
まずはどどん波からいこう。あれ使い道ないけど。
「どどん波!」
俺の声が部屋に響いて、数瞬遅れて静寂がやってくる。やはりだめか。
「かー、めー、はー、めー……波ァァァァ!!」
やっぱり出ない。もうやめよう、余計虚しい。
俺は諦めて、壁に両手をつけて体重をかけた。
……一瞬の間を置いて、轟音が傍で鳴る。俺の両掌から、およそ人間が持ち得ない量のエネルギーらしき光の線が放出されて、さっきまで手に触れていたはずのしっとりとした肌触りの木の板が崩れ落ちる。そして俺の目前に広がる夜の町並み。
……え?
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