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気が付けばそこは砂漠のど真ん中――などという、人生に於いておよそ二度目となる体験を現在進行形で経験している俺。
しかし昨日と違うのは、今俺が寝転がっているここが、ラクダに引かれる馬車(正確にはラクダ車)の中だということだ。
そして当然のごとく俺に膝枕をしている変態。壁に背を預け、顔を下(読みは『こちら』)に向けて居眠りに花を咲かせている。幸せそうにすやすや寝息をたてるその顔は、昨日の無表情の化身みたいな姿を微塵も感じさせない。
観察してたら涎が落ちてきた。すかさず首に力を入れて衝突は避けたが、危ねえなこの野郎。
俺が躱したせいで変態の脛に涎がついたので、もうこいつは枕として使えない。三下が。
さて、これ以上ラクダ車のスペースを取られても困るので、さっさと叩き起こすとするか。
……………………いや。むしろこれまでの鬱憤が存分に晴らせる、いいサンドバッグじゃないか。
変態には悪いが、少し辱めを受けてもらうことにしよう。
……とはいえ、流石に殴ったりすれば起きるのは確実だ。ふーむ、どうしたものか。
よし決めた、アレにしよう。
名付けて、『貴方は寝ている間にとんでもない物を盗んでいきました。……私の、貞操です』作戦。
詳細な内容は企業秘密ってことで。禁則事項です、ふひひ。
――そして数分後。
「ふあーぁ……」
「うぅ……」←演技中
「お前……なんて格好してるんだ。場合によっては襲うぞ」
襲われそうなんでやめました。変態をからかうために本気で貞操を捧げる気にはなれんとです。
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