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「ご主人様ぁ~、貴方だけの性奴隷がこんなにご主人様のことを心配してるんですよ~」
俺はムスッとして座ったままそっぽを向くご主人様の頬を、訳もなく突く。あらやだぷにぷにしてる。
急に不自然な角度の体育座りになるご主人様。ほっぺたが赤みを帯びて、瞳が潤んでくる。
かっ、可愛い!
「ちょっとご主人様、そのまま上目遣いで『優しく……してね?』って言ってくれませんか!? とっても可愛いです!」
俺が褒めちぎると、ご主人様は耳まで赤くして体育座りの膝に顔を埋めた。
「うっ、うるさい! お前の方が可愛いんだよ!」
「ツンデレもいいですが、今はもっと従順な感じで! わっかんないかなあ、何ていうか、もっとこう……」
俺が言い悩んでいると、ご主人様の挙動が明らかに変わった。
すっくと滑らかに立ち上がり、無表情に戻って乱暴に俺の右腕を掴んだ。そのまま刈り取るように逆の腕も持っていくと、呆けている俺の腕を引っ張って、無理に立ち上がらせた。
……ちょっと待って、何を実況してんの俺は。
俺の両腕を上に引き上げて、バンザイの形を取らせるご主人様。なにそれこわい。俺はこれから起こる事態を想定して、拒絶の意を示すようにぐっと目を閉じた。
「おい、目を開けろ」
ご主人様の声が聞こえる。声の発生源はもはや目と鼻の先だ。
不意に、ご主人様の気配が顔前から退く。どうやら俺の顔の横に移動したらしい。耳打ちでもするのだろうか。
「ひぁっ……!」
俺が何を言われるのか恐々としていると、ご主人様が俺の耳を舐めた。舌が耳たぶを撫ぜる、ザラザラとした感触が俺を襲う。予想外の出来事に喉から変な声が出て、目が開いた。
何やら腰が熱い。ご主人様が耳たぶを甘噛みすると、次の瞬間、俺は腰に甘い感覚が迸ると共に、自身の足で立てなくなっていた。
それが腰が抜けた感触なのだと実感するのに、数秒の時間を有した。
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