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「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ! 僕は今! 猛烈に萌えているうううううううううぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「……さ、帰りましょうかご主人様」
「おわっ」
速やかにご主人様を外へ出してできるだけ静かに、マイナスイオンとか出てそうな木で出来た、爽やかな感じの宿屋の扉を閉める。恐らくもう入ることがない店への、せめてもの配慮だ。
「ま、待ってくれ! 代金はタダにするから!」
だがしかし、この俺の耳がタダという言葉を捉えて、体が勝手に閉まりかけの扉を開ける。
「う、いや、でも……」
「どうしたよ。別に、他の店へ行ってもいいんだぞ? 私の可愛い寝顔を見たくないなら、すぐ追い出してくれて結構だ」
女だと思わせるために、一人称は『私』にしておく。
「…………」
黙り込む宿屋の少年。店主か、その息子と言ったところだろう。
というか、しまった。もしかして俺っ娘の方が萌えるタイプなのか。ちくしょう、慣れてもいないのに軽々しく『私』なんて遣うんじゃなかった。
「はあ、解ったよ、仕方ない。……但し、条件がある」
「何だ? 寝顔を見せるまでならOKだ、何でも言え」
「あの、そのだな……」
余程言いにくいのか、口籠もる。少年はまだ恥ずかしそうに俯いたまま、店の奥の方を指差した。
「僕の側近の一人と、その、絡んでくれないだろうか……。君と一緒なんだ」
俺と一緒? はて、俺は別にマグロの刺身が名前の猫でもなければ、おかあさんでもない訳だが。
……ん? 「絡んでくれないだろうか」?
いや、だからさ、見るのは好きなんだけど、って、何で絡みなんて言葉を知ってるんだよ? あーもう訳分かんねー!
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