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「いや、それはちょっと……。俺の体はご主人様だけの物だから」
……あれ、ご主人様が反応しないなー、って俺が締め出したんだった。
「今、何か碌でもないことを言われたような気がしたんだが。というか言っただろう」
「こいつが言ってましたよ」
俺は返事を聴いてショボーンとなってる少年に指を突き付ける。当然、出任せだ。
「俺もこいつが言ってたと思う」
そう言ってご主人様が粘着質な目で見るのは俺の方。やだなあ、違いますって。
「ジュピター様、食事のご用意が出来ましたよー」
ニコニコな笑顔で、店の奥からメイド服姿の少女が出てくる。妙に腕や脚の露出が多く、着せた奴――ジュピターと呼ばれた少年か、その親父――の趣味であることが伺える。歳は、俺の今の外見と同じぐらいだろうか。後ふたつぐらい進めて、十五とか。
ていうか――
「超・可愛いっ! 何この不思議生物! 名前は!?」
「え、あの、ちょ。……ボクはイオって言います……」
俺は抱き付いて一通り感想を述べてから名前を訊いた。一人称は『ボク』……で触った感じ胸の膨らみはないから、男の娘だな。
「男の娘……。じゃあ性別はイオだな! うわ~、この子は何? 元からこの可愛さなのか?」
ジュピターと呼ばれた少年に声をかける。彼は俺の豹変ぶりに驚いていたようだったが、「あ、ああ」と辛うじて解る程度の反応を示した。
「落ち着け。お前も似たような物だろうが」
ご主人様が宥めようと暴言を吐くが、俺の暴走は止まらない。つーか似てないし。天然の男の娘なんか、珍しいなんてもんじゃないんだぞ。
俺から見れば魚介類よりよっぽど人間国宝だ。何せ希少価値が高い。
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