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いやいやいやいや落ち着こう。この少年は一番新しい記憶が「お兄ちゃん」だと言いたいんだそうだそうに違いない。
決してご主人様と面識があるのではない……と思いたい。
「久しぶりだねお兄ちゃん!」
「ああ、久しぶりだな」
一瞬で希望を粉々にされたっ!
くそう……ガキめ、許すまじ!
「ご主人様は俺だけのご主人様なんですぅー! お前みたいなガキんちょには渡さないかんな!」
「……? お姉ちゃん、なんでおんなの子なのにおとこの子のことばつかってるの?」
子供の無邪気な視線が痛いっ……!
「お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだよ。俺は男の娘なんだ」
俺はできるだけ笑顔でその質問に答えてやった。大人の対応は時として世界を救うのだ。
少年は俺の言った言葉の意味が分からないのか、首を傾げて頭上にはてなを浮かべている。ちくしょう、可愛いじゃないか。
しかし我が愛しのご主人様はこの男の子とどういった関係なのだろうか。若干の誇張表現は含んでいるが、どうだろう。人間的にはかなり好きだったりする。優しいし。あと微妙にイケメンだし。
「この子とはどういう面識が?」
まあ気になったのに尋ねない理由はないし、せっかくなので訊いてみた。ご主人様は顎に手を当てて考えている。
何やら、どう説明すればいいか悩んで……なんだか顔が赤いが、さっきの俺の発言が恥ずかしかったのだろうか。そういえば、こういうところが萌えるのもポイント高いよなぁ。
「いや、俺に覚えはないが、俺も多少は有名だからな。どこかで俺を見たことがあるのだろう」
「お兄ちゃん、はやぐいのたいかいに出てたよね!」
ご主人様が言い訳じみた文を並べると、それに呼応するように少年が自身の記憶の詳細な説明を口にする。
……なんだか出来過ぎてる気がするのは、俺だけなのか?
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