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「うー……嘘だッッ!」
唸ってから否定の叫びをあげる俺に、ご主人様は「とりあえず落ち着け」と冷静に声を掛けてくる。
ふん。今の俺は閲覧制限を掛けられてご立腹なのだ。落ち着かせられるもんなら落ち着かせてみろってんだい。
「ほら、よしよし」
「はうぅ~……」
頭を撫でられて変な声を出してしまった。少年も俺の頭を撫でようとしてくれているが、ご主人様の腕が邪魔して手を伸ばせないようだ。
そうだ。それでいい。全世界の人間が俺を愛でようとすれば、必然的に平和……いや、戦争はまず確実に起こるな。不謹慎だ、やめとこう。
とりあえず撫でられてハイになってるのは否めないので、ご主人様に擦り寄っていく。気持ちええわぁ。
「お姉ちゃん、きもちよさそうだね~」
「そうだな」
少年が邪気の込められていない口調で俺の状態を指摘してきた。それに、ご主人様も嬉しそうに答える。最近、無表情状態のご主人様の気分が言葉の抑揚で掴めるようになってきた。嬉しい進歩だ。
「しかしこれでは歩けないな……」
困ったように呟いて、俺の膝の裏部分に左手を置く。「うぇ?」と俺が素っ頓狂な声をあげると同時に、首の下辺りに右手を回して、左手の力を上方向に入れた。
「うむ、これでよし」
いわゆる二度目のお姫様抱っこである。やはり、どこまでも健全だ。何故閲覧制限が掛かったのか、未だに理解できない。
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