61人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょ、ちょ、ご主人様、下ろしてくださいぃ!」
恥ずかしがる俺を見てご主人様は無表情のまま頭にはてなを浮かべるが、少年は面白そうにカラカラと笑っている。顔が熱い。
確かに、傍から見ればかなり初々しい反応だったのだろうが、何も笑うことないと思う。ガキんちょのくせに。
とりあえずジタバタと暴れてご主人様から離れると、俺のあまりの挙動不審さに周りの視線が集まってきた。
それでさらに恥ずかしくなったのか知らないが、顔の体感温度が上がるスピードがどんどん早くなっていく。
「見るなぁ……そんな目で俺を見るなぁ!」
「はっはっは、どこへ行こうというの……ちょ、待て、言わせろ。本当にどこに行こうというのだ」
台詞が言えなくてオロオロした口調になるご主人様を無視して、俺は走った。……涙で前が見えないため、肘を曲げた腕を体の前方に配置して。その姿は、周囲の目にはさぞかし滑稽に映ったことだろう。
数秒も走っていると、すぐに壁にぶち当たる。
「ぶぉわっ!」
当然だが、予知能力のない俺が壁に対処できる訳もなく、すぐに額を何かザラザラした壁にぶち当てた。
その瞬間、轟音が響き渡った。続けてパラパラと何か堅い物が崩れる音と、さっきまであったはずの壁の感触を感じていない俺の両の手。そして俺は緊張の糸が途切れたように、その場に倒れ込む。
これだけ続け様に倒れていれば、嫌でも分かってくる。
俺は、両手から衝撃波みたいなのが出せるらしい。そしてそれをするとすぐに疲労感……が……。
俺はそっと目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!