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その時、俺の視界に有り得ない物が移り込んだ。
十五メートルぐらい離れていても分かる程デカい鱗。体長の半分もある長い尻尾。頭には禍々しい形をした、二本のご立派な双角。更には体長よりもデカいんじゃないかと思える、猛々しい翼!
これだけで何か解ったという人は……そう、ファンタジー小説の読み過ぎだ。
ていうかぶっちゃけ、翼と鱗が並べば次に出てくる単語は決まってるよね。
「ド、ドラゴン……!」
喰われる、本気でそう悟りました。
だが現実は甘くない。躓きながらも戸惑いながらもドラゴン様から逃げ惑うこと数時間。
見えたのは泉と森。感じたのは絶望の光。
「蜃気楼、か……とうとう俺も年貢の納め時かな……」
この十五年、決して楽しくない人生ではなかった。それに最後に二次元の存在だと思っていたドラゴンまで生で見れたんだ。
悔いは、ない。
「ち、ちょっと待ってよ。ハァ、ハァ……」
不意に聞こえた青年の声が、俺を現実に引き戻した。心なしか、ドラゴンが翼を羽ばたかせる音は聞こえない。
俺は、助かったのか……!
「君、可愛いね。僕の主人にならないかい?」
主人? 何を言ってるんだこのドラゴンは。
……え? ドラゴン?
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