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しばらく話していると、近くの村まで送ってやると言いだしたドラゴン。せっかくの厚意を無下に扱う訳にもいかないし今回は僕とかの重い話でもないので、俺はその申し出を快く受け取ることにした。
ドラゴンに近くの村まで送って貰っている間に、俺たちは若干の情報交換を行う。
主に俺の話だ。
「へぇ……で、キミはその『地球』って所から来たんだね?」
「はい、まあそうです」
「じゃあ、異世界の門が今回はその地球と繋がっちゃったんだね?」
えー……異世界の門とか今更言われても解んねえよ……。
俺は取り敢えず「そうだと思います」と返しておいた。無難な選択だ。
どうやらここは地球ではないどこからしい。ドラゴンに訊くと「この世界はこの世界だ。むしろ世界に名前がある方が珍しいよ」と答えた。
地球とは天体の名前であって世界の名前ではないのだが……言われてみると、まあ確かに、俺の元居た世界にも名前はなかった。
ここで俺は、さっきから気になっていたことを尋ねる。
「ところで、名前を教えてくださいませんか?」
「ああ、そういえばまだ名乗ってなかったね。僕の名はタック・トアレ。しがない慮竜だよ」
リョリュウ? これまた聞かない単語だ。
「あの……リョリュウとは一体……」
「ああ、キミはチキュウから来たんだったね。慮竜ってのはつまり意思を言葉にできるドラゴンのことさ。なんでも、大昔に人間と交尾してこの能力がついたって話だ。その分、縄張り意識とかも薄れてるけど……とにかく、便利な能力だよ」
「ほぇー……すごいっすなぁ」
俺はちゃんとした敬語を使うのも忘れて驚嘆していた。
そうしていると、遠くに人口の建物らしき物があるのが解った。あそこが村とやらなのだろう。
「見えたよ、あれがマクの村だ」
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