《第4章》中堅患者への道

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 あくまで日中の仕事が"大本命"なのだけど、空き時間の有効活用&最低限の財源の確保という意味でも、副業のほうも早く見付けたい…そんな思惑も、見え隠れしながら始まった、今回の"2部制"就職活動。  果たして…シャバが暗い時間帯に働くという、文字通り盲点を突いた名案と、なりますかどうか…。  昼の部では、電話での問い合わせで僕が透析患者だと告げると、そこで門前払いになるケースが珍しくない一方で、深夜or早朝の部では、最初に電話してみた物流会社こそ、 「(求人誌に)軽作業とは書いたんやけど…。  少し力仕事も、してもらうコトになるんで…」 と丁寧に断られたものの、2件目の水産加工会社では、 「毎朝ちゃんと時間通りに出勤できる人なら、大丈夫ですよ」 と、かなり好感触な反応。  早速、その日のうちに面接にお邪魔するコトに…。  水産加工会社は家から自動車なら10分弱の所で、その気になればチャリでも通えそうな距離…通勤条件は、文句なし。  前もって聞いていた、 「深夜とか早朝は、募集を掛けてみても応募が少ない時間帯という事もあって、昼間の仕事に比べて採用率も上がるらしい」 という情報を裏付けるように、面接に応じて下さった担当者は僕が透析患者である事や、前職を1年勤めて"一身上の都合"で辞めた理由には、深く触れないまま、 「もし採用になったら、いつから来れる?」 と聞かれたんで僕も、善は急げとばかりに、 「明日からでも、大丈夫です」  かくして、 「1ヵ月の試用期間の上で」 というテスト期間こそ付くものの…まずは、午前4時から7時までの早朝アルバイトが決定。  ざっくりと計算しただけでも、家に入れる分プラスαの月収はこの早朝バイトで、確保出来そう。  収入面の"保険"だけでなく、気分的にも少しばかりの余裕が出来ましたよ。  翌朝…と言っても、まだ月明かりが綺麗なうちから事務所に併設された工場に初出勤。  就職情報誌には"簡単な軽作業"とだけ書いてあった、仕事の正体は…冷凍品の袋詰めだった。  ブロック状の冷凍マグロを、ビニール袋に入れていくだけというミッションは確かに、難易度も高くなさそうで力仕事でもない軽作業だし、特にスピードを求められるような事さえ無さそうな感じ。  にも関わらず、1ヵ月の試用期間があるワケとは…?
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