《第4章》中堅患者への道

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 透析との因果関係さえハッキリしないような、多少の倦怠感や妙な体の重さを感じる事くらいは、有るものの…ここ最近は絶不調レベルというのは、全く無い。  ココで働き出してから、特に自覚できるようになった体調の良さは、月2で行われる定期採血の結果でも…たとえば貧血の値が改善されるなどなど…といった、目に見えるカタチとして実証されていた。  週1の公休を除く毎朝、早起きして出社する生活にも身体が慣れてきたし、そもそも毎朝早く起きるのが全く苦にならないほど、話題も豊富な人達の居る工場に向かうのが、今は素直に楽しい。  昼の部の就職活動こそ、未だ足踏み状態から抜け出せてないものの…ここ最近は、比較的心身共に落ち着いているってコトなんかしらん。  そんな中…透析室では、新しい主治医となって頂くウワサの女医・[カオルさん]が着任。  僕は正直、 「かなり若い女医さんらしい」 という情報には、それほど期待していなかったのだけど…。  いざ蓋を開けてみたら…若いどころか[カオルさん]は、本格的に患者さんを受け持つのも初めてという、正真正銘のルーキードクターだった。  [郁さん]の退職に伴い、各ドクターが受け持つ患者さんの振り分けが見直され、まずは普段から状態の安定している患者さんを中心に、引き継ぐコトになった[カオルさん]。  その受け持ち患者"第1陣"に、僕も選ばれていたワケで。  思えば導入から2年強…この間には、大きなトラブルもなくこういう場面で、安定している患者の1人として名前が挙がるというのは、本当に有り難いコトであります。  いわゆる"フツーの患者さん"とは、少しばかりツボがズレているフシの有る僕は、自分が命を預ける医療従事者に求めたい条件として、そのキャリアや技術には大してウエイトを置いていない。  なので…今回のような主治医の交代にも、特に戸惑いや抵抗は無かったのだけど…。  やっぱ多くの患者さんは、自分の主治医がルーキードクターに代わるって事態には、多かれ少なかれの抵抗や不安を感じてしまうモノのようで。  まして[郁さん]のように、多くの患者さんから信頼された人物が前任者ならば…そのギャップの大きさもまた[カオルさん]への逆風になってしまい…。
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