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[カオルさん]の場合、しばらくの期間は腎内科のベテラン医師[河さん]が付いて、全面的にバックアップするから心配ない…と聞いても、主治医の再変更を希望する患者さんがチラホラ。
けれど…コレは決して我が儘ではなく、患者さんが少しでも悔いのない人生を全うするための、1つの主張なワケで。
むしろ個人的には、それだけ生きるというコトに執着出来る方々が、少し羨ましくもあったり…。
ともあれ…そんな[カオルさん]と[河さん]の、W主治医体制が始まって、しばらく経った頃。
透析中の僕のベッドに、[河さん]が、
「ちょっと、時間ええか?」
と、1人の男性を連れて来た。
外来で[河さん]が受け持っているという、その患者[坂くん]は色白長身で端正な顔立ちが、かつての病室仲間の[ジャニ]を彷彿とさせるだけでなく、年齢も[ジャニ]や僕とタメだった。
まさか…同じ病院で2人も、同い年の戦友と知り合うコトが出来るとは…(苦笑)。
透析導入が現実味を帯びて来たある日、主治医の[河さん]との会話の中で、同い年で血液透析をしている僕の存在を知ったという[坂くん]…すぐに、
「導入前に、いろいろ話を聞いてみたい」
と自分から[河さん]に申し出て…わざわざ仕事明けに、透析室の僕のベッドまで足を運んでくれたらしい。
ベッドの横に用意された2脚の椅子に、[河さん]と[坂くん]が腰を下ろして対談スタート。
場がヘンに堅苦しくならないように、他愛ない話題なんぞも交えながら、
「導入直前は、どんな心境やった?」
「2種類(血液or腹膜)ある透析療法の中から、血液透析を選んだ理由は?」
と、熱心に質問してくる[坂くん]に、まずは僕が先輩患者としての体験談で答え、必要に応じて[河さん]が医学的にフォローして下さる…という流れで、対談は進んでいき…。
[坂くん]は空気が和んだ頃合いを見計らっていたように、少しばかり神妙な顔になって…恐らく彼の中で、今回の対談の核心だったであろう話題を、そっと切り出した。
「…あっちの調子は、どう?」
それは決して、気になるお年頃とか男としての自尊心とか…そんな、ちっぽけなレベルの話ではない。
将来の子孫繁栄にも関わる事なんで、自分だけでなく周りの方々にも影響を及ぼしかねない、決して見過ごす事の出来ない大きな課題なワケで…。
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