《第2章》透析患者な高校生

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1‐1.『透析 'dialysis'』~その役割~  1ヵ月半の入院生活を終えて、僕は4月から新3年生として高校に復帰するコトになった。  導入入院中の透析は、プロ野球で言えばオープン戦のようなもので…自動車学校で言うと、やっと教習所コースの修了検定をクリアして、これから路上を走り出す…という段階。  邦画"免許がない!"でも、舘ひろしさん演じる主人公が、 「道路を走る事が、こんなに怖い事だとは…」 とビビりながら言っていたように、やっぱり路上を自分の運転で走ってみて、初めて気が付くようなコトも多いハズ。  教習所のコースには、急に死角から飛び出して来るキッズやチャリも、やたら後ろから煽ってくるクルマも居ないしね。 「これからの"外来透析"という実戦の場でこそ、真の自己管理能力が試されるんやぞ」 と、自分の肝に銘じつつ…だからって、あんま重くは考えずに…要するに、 「まぁ、ボチボチやりますか…」 ってコトで(苦笑)。  透析日には高校から電車とチャリで病院に向かうんで、それは内科外来に通っていた頃と変わらないのだけど…。  なんせ透析は、17時に穿刺してから4時間の長丁場…家に帰るのは、22時に近い時間になる。  その後から宿題に取り掛かるってのは、正直あまり気が進みませんな…。 「4時間あるんだから、宿題は透析中にやればイイじゃんか」 とか思う人も、居るかも知れないけれど…透析中には高校とは別の、もう1つの"授業"が有るワケで…。  その授業とは、透析導入から日が浅い患者さんに対して透析ナースが行う、"透析の基礎"学習。  透析中にその日の担当ナースが30分ほど、ハンドブックに沿ったレクチャーをしてくれる。  授業で使用するハンドブックは、希望する患者さんは後から買う事も出来るのだけど、やっぱ最前線で戦っているナースの解説には、理屈抜きの説得力が有りますな。  透析を学ぶ上で、まず必要な知識…それは、腎臓の役割。  一言で言えば"体内の浄化"をしている腎臓の、主な任務は…  -尿の生成-  体内を巡って来た血液は腎臓の糸球体で濾過されて、不純物を除去された分だけが心臓に戻され、また送り出される。  この課程で弾かれた老廃物は、膀胱に送られてから尿となり排出される。
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