《序 章》術前検査

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 口腔外科と比べて、患者さんの平均年齢が高そうな内科外来の待合室では、学ラン姿の僕は随分と目立つ…ってか、浮く。  毎回、周りの人達が、 「誰かの付き添いさんかしら?」 「あら、診察室に入って行くけど…え、患者さんッ?!」 なんて言いたげな目で、見ているような気がするのは…ただの被害妄想ですかね?(苦笑)  ともあれ…相変わらず、自覚症状らしい自覚症状が無かった事もあり、1年弱の通院と途中1回の安静入院を経ても尚、 「自分は腎臓病患者なんだ」 という実感は、全く沸かないままだったのだけど…。  外来診察室の真向かいに有る採血室で、毎回採っていた採血の値はジワジワと、"悪化の一途"を辿っていたワケで…。  何の加減なのか…僕の場合は、一冬越すと数値がグンと悪くなるパターンが2年続いて、ふと気付けば初診から約1年半が経ち…自分なりに、腎臓や透析に関する知識も少しは付きつつあった、平成5(1993)年2月。  あの時[郁さん]が診断書に記した、 「近い将来…」 は、すぐ目の前にまで迫って来ていた…。  ちなみに…ドクターが、患者さんの透析導入のタイミングを判断するには、 「臨床症状」 「腎臓機能」 「日常生活障害」 という3項目を"柱"に、当時の厚生省が平成4(1992)年に策定した、 「長期透析療法 導入適応基準案」 なる、ちょいとお堅い名前のガイドラインが有るらしく…。  各々の項目を更に、値や症状・程度ごとに階級分けしたものを軽い順に10・20・30で点数化して、患者さんの該当点数の合計が60を越えると、"透析導入"の適応目安…というもので、交通違反の点数が重なっていくと運転免許取り消しに至るのと、同じような仕組み。  この案に当てはめると、僕は初めて腎臓内科を訪ねた時点で既に、免許停止ぐらいの状態だったのかも知れませんな(汗)。
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