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「へぇー。で?」  俺が冷たく言い放つと、帰国子女について熱く語っていた自称悪友の夏生雅樹はばん、と机を叩き立ち上がった。  ついでに椅子も倒れる。 「おまえ、なにが『へぇー。で?』だ。帰国子女だぞ、き、こ、く、し、じょ」 「たかが転校生が来るぐらいで何興奮してるんだ。それが帰国子女だろうとそうでなかろうと、そう変わるものじゃない」 「わかってないなぁ~、高見くんは。帰国子女って言うからにはなぁ、挨拶代わりにキスとかしてくれる可能性が大ってことなんだぜ? オー、マサキー、グモニー……ってな」 「わかってないのはおまえの方だ。それは独断と偏見によるおまえの勝手な妄想だ」  雅樹は俺の言葉など聞こえていないようで、一人馬鹿みたいにスキップなんぞをしていた。  他人の色恋沙汰にすぐ首を突っ込みたがるだけの馬鹿野郎だと思っていたが、どうやら自分自身の勝手な妄想によりささやかな幸福を夢見てはしゃぐ阿呆でもあったらしい。  ついさっき、帰りのSTで担任が 「明日は転校生が来るそうだ。帰国子女らしい。まあ、仲良くしてやってくれ」  と言ってから、雅樹を含む他の一部(本当に、ごく一部)の阿呆な男どもははしゃぎまわっている。  勝手に興奮する分には一向に構わないのだが、俺をその騒ぎに巻き込まないで欲しい。  同類だと思われたらたまらんだろうが。  これ以上この馬鹿どもには付き合いきれん。 「帰ろ」
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