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椿は一発一発を渾身の力を篭めて振り下ろす。
椿の持つ棒は打撃よりも刺突に優れた武器なのに、そんな初歩的なことすら分からないほど今の椿には冷静さを欠いていた。
何度振り下ろしても当たらない。
当たらない当たらない当たらない。
何十、何百、何千と振り下ろした頃、椿の息が切れついに棒は持ち上がらなくなる。
「はぁはぁはぁ……くそっ」
疲労から腕が上がらなくなった椿はそれでもムラマサを睨みつける。
ムラマサもまた自分に刃向かう椿に興味を抱き、雑事に付き合う。
「あっははは、もう終わりかな?」
ムラマサは余裕を崩さずに嘲笑する。
椿はますます憎悪が募りムラマサを睨みつける。
「僕は有言実行派だって言ったろ?一人は見逃してあげるよ。今日はこいつだけで十分だよ」
椿の怒りが心地いいのかまたしてもムラマサは柚子の頭を踏み付けた。
それどころか柚子の死体を道端のゴミのように蹴りつける。
「ム、ラ、マ、サァァァァァァァァ!!!??」
椿は上がらないはずの腕を持ち上げムラマサへ渾身の一撃を振り下ろす。
その切っ先はムラマサを討ち取るには至らなかった。
だが、椿の魂は届いた。
わずかに、ほんのわずかにだがムラマサの顔に鮮血が滲む。
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