序章

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夕焼けに染まる坂道。 鈴虫の鳴き声が秋を感じさせる。 その中を寄り添うように歩く二人の男女。 男の名は稀捺 椿(きなつ つばき)。 まだ年は7つくらいだろうか。 短く切られた髪が活発な印象を与える。 女の名は稀捺 柚子(きなつ ゆず)。 椿の姉である。 椿と同じ黒髪だが、瞳は真っ黒である椿に対し柚子の瞳はやや青みがかっている。 髪は長く、腰よりも下まで届いている。 立ち居振る舞いは大人びていて年の割には落ち着いた印象がある。 椿は姉の柚子と一緒に手を繋いで家に帰るところだった。 二人は昨年親を亡くし、身寄りはない。 幼い二人は生きることすら大変な貧しい状況だったが、助け合いながら生活していた。 いつも通りの温かい姉の手。 5つ年の離れた優しい姉。 椿は姉が大好きだった。 他愛ない話をしていると上がるのが大変な坂道もあっという間に終わりが見えた。 坂を上り切るとそこには二人よりも少し年上の少年が立っていた。 少年は人間離れした美しさを持っていると姉弟は思っていた。 人間では滅多にいない銀の髪と瞳。 腰より長い美しい髪。 さらに目立つのは腰に携える少し長い刀。 派手な装飾があるわけではないが、見るものの目を強制的に引き付けるような魔性がある。
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