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少年は銀髪を揺らしながらゆっくりと姉弟へと近寄る。
「僕に出会うなんて君たちは本当に運が悪いね」
姉弟を舐めるような目で見つめると少年は一言そう口にした。
柚子は得体の知れない男から弟を守ろうと自然に椿の前に立つ。
「そうだ! 君たちのうち一人だけは助けてあげよう。うん、それがいい」
少年は屈託のない笑顔をし、無邪気な子供のような声で意味不明なことを言う。
しかし、少年が刀に手をかけたことで柚子が察する。
椿は少年の言葉がよく理解できず、柚子がなぜ自分を庇うように立っているのかも分からず戸惑いを隠せない。
落ち着きなく姉と少年に視線がいったりきたりしている。
少年と真っ正面に向かい合う柚子には、少年の放つ殺意が冗談ではないことを理解出来てしまっただけに体に震えが走る。
なぜ、どうして自分たちが?
当然の疑問が柚子の頭を駆け巡る。
柚子も戸惑いを隠すことが出来ないくらい動揺しているのだが、後ろで戸惑う弟を不安がらせまいと必死で押し隠す。
「なぜ自分たちが? キミはそう思っているね」
少年は柚子の心を読んだように言葉を発する。
柚子はびくりとその言葉に反応してしまう。
それは少年の言葉を暗に肯定してしまう行為だった。
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