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「姉ちゃん!くそっ、動けよ俺の足っ!?」
椿は安心してしまった自分に後悔し、なんとか立ち上がろうと足掻いていた。
だが、そんなに早く回復するものではない。
柚子はそんな椿へ振り返らずに歩き続ける。
弟を見たら覚悟が揺らいでしまうから。
足が前へ歩くことを止めてしまうから。
「あっははは、強い子だねキミは。下手な大人より余程強いよ」
ムラマサは柚子に若干の興味を示した。
「だけど……」
無情にもムラマサの刀は柚子の心臓を貫いていた。
ムラマサの刀は怪しい光を放ち蠢いていた。
それはまるで柚子の命を吸っているようで……。
柚子はかふっと血を吐き、声もなく崩れ落ちる。
「悪いね、僕は有言実行派なんだ」
一瞬、ほんの一瞬で柚子の命は散ってしまった。
なんの非もなく、なんの罪もなくあっさりと。
ムラマサは刀を引き抜くと血を払い鞘へと戻す。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 姉ちゃぁぁぁぁぁーーーん」
衝撃は遅れてやってきた。
姉が死んだ。
頭がそれを否定して、声に成らず、今ようやく声が出すことができた。
椿は叫ぶ。
最愛の姉であり唯一の肉親である姉が奪われた。
椿の頭の中はなんだかわからない黒い感情で一杯になった。
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