茶を入れろ。十秒で。

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「御堂 晶。三年だ」 声も綺麗だな。そしてそのまま僕をみている。 「?」 「相手が名乗れば自分も名乗るのが礼儀と学ばなかったか?」 「すいませんっ、一年の日向 葵といいますっ!」 口調が冷たい!研ぎ澄まされたナイフみたいな雰囲気もあって怖いっ! 「なぜここへ来た」 「入部する部活を探していて…」 「それは聞こえた。部活表でも我が部の名は入っているがとりたてて興味引くような文章を記載させた覚えはない。なのになぜここへ来たのかを聞いている」 「それは…」 消去法で見ていったら自然にたどり着きましたなんて理由が通じるのでしょうか。この厳格そうな方に。 「用意ができました!」 お盆に上品なデザインのティーカップを乗せて慌てるように飛び出してきた。 だが勢いよく開けられた扉にすぐそこにあった本の山があたり崩れ、足元に散乱する。 「うわっ!」 「楓先輩危ないっ!」 足元を本にとられバランスを崩していくが、とっさに扉の向こうから楓の手にあるお盆を奪う紅葉。そして奪われた勢いもありそのまま転倒。 「紅葉ぃ、俺も助けてよ」 「カップを守っただけ偉いよ?」 「私の茶器は高級品だ。割った日にはどうなるかわからぬわけではあるまい?とっとと片付けろ」 「はい!」 急ぎ散らばった本を片付け始めたのを確認し、晶は葵に視線を戻す。 「先程あの馬鹿が倒れたとき叫んだな。楓先輩と。なぜだ?」 「なぜって…二年生だから先輩ですよね?」 「そうではない。あの馬鹿共は一卵性双生児。親も担任も友人も間違えるのを面白がり、髪型も立ち振舞いも喋り方も何から何まで同じにしているという馬鹿な考えを実行している馬鹿共だ。なのになぜ倒れたのが楓とわかった」 「馬鹿連呼しすぎ…でもなんで?」 と言われても 「楓先輩は紅葉先輩じゃありませんし、紅葉先輩は楓先輩じゃありませんし…僕なにか変なこと言いました?」 驚いたように目をぱちくりさせる山吹兄弟。晶は鼻を鳴らし 「馬鹿どもを双子ではなく一の存在と見ているというわけか」 「俺達をあっさり見分けるなんて部長以外に初めて見た」 「なんか君のこと気に入ったな」 「俺も気に入った。ねぇ部長」 晶は文字通りニヤリと笑みを浮かべ指を鳴らす。 即座に紅葉が壁に打ち付けてある大きなホワイトボードの前に立ち走り書きをした。 ホワイトボードにかかれた言葉はたった六文字。 【かごめ かごめ】
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