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「心の声がまるっとだだもれだよ。ヒマワリ君」
「そんなところも可愛くていーね。ヒー君」
「男にカワイイはないでしょうっ!」
変に暴れると縛られた部分が痕になる気がするため、口で噛みつく。
「遊びは後でまたやれ。入部テストを始めるぞ」
楽しそうに笑いながら言う台詞が鬼畜のにおいを漂わせている。
「はい。じゃあヒマワリ君、【かごめ かごめ】って知ってるかな?」
「童歌のやつだけど、我が部の基礎中の基礎なんだ」
かごめ かごめ
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った
後ろの正面 だぁれ?
「知ってますよ。遊びでしょ」
「全国にかごめはある。でも少しずつ言葉が違うんだよね」
「だから一番知られてる唄を書いたよ。ねぇヒー君。おかしいと思わない?」
人を強制的に引きずり込みパイプ椅子に縛り付けるのはおかしいと思います。
「…夜明けの晩に 鶴と亀が滑る。夜明けは文字通り闇が晴れる。なのに日が沈んでいる晩が続くのは文法的におかしいし、鶴は千年亀は万年と縁起のいい象徴がこんな風に言われるのは不吉ですよね」
「だよねー、俺もそう思うよ。で、この童歌…ただの童歌じゃなくその歴史、情景を歌っていると言われてるんだ」
「かごめって漢字でどう書くか知ってるかな?」
「籠目…でしょ?」
竹を編んだ籠の中にいる鳥が出られない。一番始めに来る台詞。
「じゃーさ、こう書くって説があるの知ってる?」
そういって紅葉がホワイトボードに書いた漢字は
「籠の女?」
「で、籠女」
籠の女の鳥がいついつ出やる?
変だよな。
「じゃあ、これなら?時代画でとある景色なんだけどね」
楓がそばにあった本を開いて葵に見せる。
そこは格子の窓の向こうに色とりどりの着物を着た女性達が描かれていた。
「…籠の中の鳥…この女性達が鳥ですか?」
「ふむ。頭の回転は悪くないようだ。一説にはその女性達が鳥と言われている。
理由はわかるか?」
時代劇をよく見てたから、この女性達がどんな存在かは予測できる。
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