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僕は悩んで、悩んで、悩みぬいた上で、小さなイヤリングを買った。
ピアスを怖がって空けられない君が、羨ましそうに友達の耳を見ているのを知っていたからだ。
赤い包装に緑のリボン。
お決まりの組み合わせに包まれた小さな箱を受け取って店を出る。
そのまま落ちてきてもおかしくない、重そうな雨雲が一面に空を覆うせいで日が沈む前なのに辺りは薄暗い。
でも今日はそんな天気のほうがいいのかもしれない。
街は待ってましたと叫ぶように電飾の光を輝かせ、どこに行くでもない二人組みの男女はそれを見て、誰も彼も幸せそうに笑うのだった。
僕はコートの右ポケットに入 れた箱を、上から軽くポンポンと叩き、そんな人々の群れに混ざった。
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