“LOST”

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速い! ベンチの小柄な男が叫んだ。 巧みなボール捌きで守備の穴を作られ、そこを絶妙にロングの11番、確か大宮が突いてきた。 ライン間際で彼が飛び上がり、その一瞬だけ時間が止まったかのようだ。 空中でラインを越し、そのまま全身を捻らせる。左足で空中を蹴り、同時に右肘を上げる。 思い切り振り下ろした手には、黄色いボールが握られていた。 手から放たれたボールは真っ直ぐゴールに飛んでゆく。キーパーのジャージのが、風にはためいた。 ネットが破れそうな程、ピンと引っ張られた。 一秒後、時間は切れた。 希望が失われてゆく瞬間を、観客席で眺めていた。
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